省エネルギーや機器の小型化を実現するため,パワー半導体デバイスのスイッチング動作を利用した電力変換による電源回路(スイッチング電源)が用いられるようになってきました。スイッチング電源の適用範囲の拡大や,電力変換性能の向上は著しいのですが,一方で回路は高電圧・大電流となると同時にdi/dtやdv/dtも大きくなってきています。このことにより,電力変換回路中に存在する寄生インダクタンスや寄生キャパシタンスの影響により生じる電磁雑音が無視できなくなってきました。これらスイッチング電源から生じる電磁雑音による妨害(EMI: Electro Magnetic Interference)だけでなく,自他の生じる電磁雑音に対して影響を受けないような耐性(Immunity)を図った電磁両立性(EMC: Electro Magnetic Compatibility)が重要となっています。電力変換回路で生じた電磁雑音問題に対して,電源線にフェライトコアを挿入して抑え込むといった場当たり的な対策では,時間やコストばかりがかかり,根本的な解決ができません。舟木研究室では,スイッチング電源回路における電磁雑音の発生メカニズムを明らかに,電磁両立性を図った電源回路設計論の構築を目指した研究を行っています。このため,従来の線形集中定数回路をもとにした回路設計にとどまらず,配線構造等を考慮した分布定数線路やクロストーク等の電磁気的な視点や,半導体・誘電体・絶縁体・磁性体等における非線形性を如何にして電源回路設計に適用していくかについて検討しています。